【警告:山梨の建設・農業現場】令和7年6月~熱中症対策「義務化」!違反は許されない、命を守る絶対的措置とは

【山梨県内事業者の皆様へ】令和7年6月1日施行!改正労働安全衛生規則に基づく「職場熱中症対策」徹底解説 – 具体的な義務と対応ポイント

山梨県内の事業者の皆様、従業員の皆様の安全と健康を守るための重要な法改正について、専門的な視点から詳しく解説いたします。

近年、夏季の猛暑は全国的な課題となっており、特に盆地特有の気候を持つ山梨県では、職場における熱中症リスクが非常に高まっています。こうした状況を受け、労働者の安全衛生を確保するため労働安全衛生規則が改正され、令和7年6月1日より、熱中症予防に関する新たな措置が事業者に義務付けられます。

本記事では、この法改正の背景、山梨県の状況を踏まえた具体的な義務内容、そして事業者が取り組むべき対応策について、詳細に解説します。施行日までに万全の準備を整え、安全で健康的な職場環境を実現しましょう。

1. 法改正の背景と山梨県における職場熱中症リスク

近年、地球温暖化の影響もあり、全国的に夏季の気温上昇は顕著です。これに伴い、職場における熱中症の発症件数も増加傾向にあり、労働者の生命と健康を脅かす重大な問題となっています。特に山梨県は、甲府盆地を中心とした内陸性の盆地気候であり、夏場はフェーン現象などの影響も受けやすく、全国的にも気温が高くなりやすい地域です。気象庁のデータによると、甲府市の年間猛暑日(最高気温35℃以上)の日数は増加傾向にあり、県内各所で厳しい暑さが記録されています。

このような背景から、国は労働者の熱中症予防対策を一層強化するため、労働安全衛生規則の一部を改正するに至りました。

山梨県内においては、特に以下の業種で熱中症リスクが高いと考えられます。

  • 農業: 主要産業である果樹栽培(ぶどう、桃など)や野菜栽培は、夏季の屋外作業が中心です。ビニールハウス内作業も高温多湿となりやすく、細やかな対策が求められます。
  • 建設業: 屋外でのインフラ整備や建築工事は、直射日光や高温下での作業が避けられません。
  • 製造業・倉庫業: 工場や倉庫内は、設備の熱や気密性の高さから、屋内であっても高温多湿環境になりやすく、適切な温熱環境管理が必要です。
  • 観光・サービス業: 夏の観光シーズンには、屋外イベントの運営スタッフや、テーマパーク、ゴルフ場などの施設管理スタッフが熱中症のリスクに晒されます。

これらの業種に従事する事業者の皆様は、今回の法改正を機に、より一層の対策強化が求められます。

2. 【令和7年6月1日施行】改正労働安全衛生規則の概要と事業者の新たな義務

令和7年6月1日から施行される改正労働安全衛生規則では、熱中症による重篤化を防止するため、主に以下の2つの措置が新たに義務付けられます。これらは、特定の暑熱な作業環境下(※後述)で作業を行う場合に適用されます。これらの改正の詳細については、厚生労働省が公表している資料「職場における熱中症対策の強化について」(PDF)で詳しくご確認いただけます。

2.1. 熱中症発生時・発生のおそれがある時の「報告体制の整備と周知」義務

事業者は、事業場ごとに、以下の者が速やかにその旨を報告できる体制をあらかじめ定め、関係作業者に周知しなければなりません。

  • ① 熱中症の自覚症状がある作業者本人
    作業者が自身の体調不良(めまい、頭痛、吐き気、倦怠感など)を感じた際に、誰に、どのように報告するかを明確にします。
  • ② 熱中症のおそれがある作業者を見つけた者
    同僚の顔色が悪い、ふらついているなど、熱中症が疑われる状態を発見した者が、速やかに報告できる連絡先や担当者を定めます。

【整備・周知すべき内容の例】

  • 報告先の担当者名(例:安全衛生管理者、職長、上司など)と連絡方法(内線番号、携帯電話番号、無線など)。
  • 報告手順(何を伝えるべきか:作業者の状態、場所、時間など)。
  • 報告体制を図やポスターで作業場に掲示する。
  • 安全衛生教育や朝礼などで定期的に周知する。

2.2. 熱中症の症状悪化防止のための「必要措置の実施手順整備と周知」義務

事業者は、熱中症の症状の悪化を防止するために必要な措置に関する内容や実施手順を、事業場ごとにあらかじめ定め、関係作業者に周知しなければなりません。具体的には以下の内容が含まれます。

  • ① 作業から速やかに離脱させること
    症状を訴えた作業者や、熱中症が疑われる作業者を、直ちに暑熱環境下から涼しい場所へ移動させる手順。
  • ② 身体の冷却
    衣服を緩めさせ、首筋、脇の下、足の付け根などを冷やすための具体的な方法(冷たい濡れタオル、保冷剤、送風など)と、そのための物品の準備・保管場所。
  • ③ 必要に応じて医師の診察又は処置を受けさせること
    症状が改善しない場合や、意識障害、けいれんなど重篤な症状が見られる場合に、速やかに医療機関へ搬送するための手順。
  • ④ 事業場における緊急連絡網、緊急搬送先の医療機関の連絡先及び所在地等
    緊急時に連絡すべき社内外の関係者リスト(管理者、救急隊、近隣の医療機関など)とその連絡先、医療機関の所在地、搬送経路などをあらかじめ定め、周知します。山梨県内の医療機関: 甲府市内の基幹病院や、各地域の公立病院、救急対応可能なクリニックなどを事前にリストアップし、連絡先・所在地を作業場に掲示することが望ましいです。#7119(救急安心センターやまなし)の活用も周知しましょう。

【整備・周知すべき内容の例】

  • 熱中症の症状レベルに応じた具体的な対応フローチャートの作成・掲示。
  • 応急処置セット(体温計、保冷剤、経口補水液など)の準備と保管場所の明示。
  • 緊急連絡網と搬送先医療機関リストの作成と、作業場内での見やすい場所への掲示。
  • 搬送訓練の実施(可能な範囲で)。

2.3. 義務化の対象となる作業場(WBGT基準・気温基準)

上記の新たな義務措置は、以下のいずれかの条件に該当する暑熱な作業場において、継続して1時間以上または1日当たり4時間を超えて作業を行うことが見込まれる場合に適用されます。

  • WBGT(湿球黒球温度)基準: WBGT値が28度以上となる場所
  • 気温基準: 気温が31度以上となる場所

WBGT値は、気温だけでなく、湿度、日射・輻射熱などを考慮した暑さの指標です。熱中症リスクをより正確に評価するために、WBGT計(暑さ指数計)を作業場所に設置し、実測値に基づいて管理することが強く推奨されます。山梨県では、夏季にこれらの基準を超える日が多く発生するため、多くの作業場が対象となり得ます。環境省の「熱中症予防情報サイト」(https://www.wbgt.env.go.jp/)で提供されるWBGTの予測値や実況値も参考にしましょう。

3. 【重要】罰則規定と義務違反となる行為

今回の労働安全衛生規則の改正に伴う新たな義務を怠った場合、事業者は労働安全衛生法に基づき罰則の対象となる可能性があります。これは、単なる努力義務ではなく、法的拘束力を伴う「義務」であることを改めて認識しなければなりません。

罰則について

労働安全衛生法では、事業者が講ずべき措置を怠り、労働者に危険または健康障害を生じさせた場合など、法違反の程度に応じて罰則が定められています。今回の熱中症対策義務化についても、これらの義務を履行しなかった場合、同法の関連規定(例えば第119条など)に基づき、「6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金」が科される可能性があるとされています。実際に熱中症による労働災害が発生した場合はもちろんのこと、必要な体制や手順の整備・周知を怠っただけでも指導や処分の対象となる得ることを、事業者は厳しく受け止める必要があります。

対象となる行為(義務違反)

具体的に、今回の改正で義務違反とみなされる可能性のある行為は以下の通りです。

  • WBGT値28度以上または気温31度以上の特定作業環境下において、
  • 熱中症発生時またはそのおそれがある場合の報告体制をあらかじめ定めていない、または関係作業者に周知していない。
  • 熱中症の症状悪化を防止するための必要な措置(作業離脱、身体冷却、医師の診察手配など)に関する具体的な実施手順をあらかじめ定めていない、または関係作業者に周知していない。
  • 上記の体制や手順に関する記録(教育記録、周知記録など)が適切に保管されていない。
  • 実際に熱中症が発生した際に、定めた手順に従った適切な措置を講じなかった場合(これは安全配慮義務違反としてより重く問われる可能性があります)。

これらの義務の不履行は、単なる行政指導にとどまらず、事業の信頼失墜、さらには刑事罰へと繋がるリスクがあることを、経営者及び管理者は深く認識し、予防策の徹底に努めなければなりません。

4. 山梨県内事業者が特に留意すべきポイント(業種別視点)

前述の通り、山梨県の主要産業には特有の熱中症リスクがあります。

4.1. 農業(果樹栽培、野菜栽培など)

リスク: 長時間の日光曝露、ビニールハウス内の高温多湿、傾斜地での作業負担、単独作業の多さ。
対策例: 作業時間帯の調整(早朝・夕方の活用)、遮光ネットの利用、ハウス内の換気・細霧冷房、こまめな休憩と水分・塩分補給(休憩場所の確保)、複数人での作業体制、WBGT計の携帯。

4.2. 建設業(屋外・屋内工事)

リスク: 直射日光、アスファルトや建材からの照り返し、重装備による体温上昇、密閉空間での作業。
対策例: 作業計画における休憩時間の明確化、ミストシャワーや冷房付き休憩所の設置、空調服や冷却ベストの活用、水分・塩分補給の徹底、WBGT値に応じた作業中止基準の設定。

4.3. 製造業・倉庫業

リスク: 熱源のある工程、換気の悪い屋内、屋根からの輻射熱、重量物取り扱いによる発汗。
対策例: 局所排気装置やスポットクーラーの設置、断熱対策、作業服の工夫、水分補給ポイントの設置、作業ローテーションの導入。

4.4. 観光・サービス業(屋外イベント、施設管理など)

リスク: 屋外での長時間勤務、着ぐるみなど通気性の悪い衣装の着用、顧客対応による休憩タイミングの難しさ。
対策例: スタッフ用の日よけ・冷房付き休憩スペースの確保、シフト調整による連続作業時間の制限、制服の通気性向上、積極的な水分補給の奨励。

5. 施行に向けた具体的な準備と対応ステップ

令和7年6月1日の施行に向けて、事業者の皆様は計画的に準備を進める必要があります。

  1. 現状把握とリスク評価:
    • 自社の作業環境における熱中症リスクを評価する(WBGT値の測定、作業内容の分析)。
    • 過去のヒヤリハット事例や体調不良者の発生状況を把握する。
  2. 体制・手順の整備:
    • 上記の「報告体制」と「必要措置の手順」を具体的に文書化する。
    • 緊急連絡網と搬送先医療機関リストを最新情報に更新する。
  3. 教育・訓練の実施:
    • 全作業員に対して、改正内容、熱中症の危険性、症状、予防策、応急処置、報告手順について教育を行う。
    • 必要に応じて、応急処置や避難・連絡の訓練を実施する。
  4. 環境整備・物品準備:
    • WBGT計、冷水器、製氷機、経口補水液、冷却グッズ(保冷剤、クールタオル等)、休憩場所(日よけ、冷房設備)などを整備・準備する。
  5. 運用と見直し:
    • 定めた体制や手順を実際に運用し、定期的に効果を評価して見直しを行う。
    • 特に夏季前には、改めて対策の確認と周知徹底を図る。

厚生労働省は、職場における熱中症予防対策を推進するため「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000116133.html) を展開しており、各種啓発資料や情報を提供しています。また、山梨労働局のウェブサイト(https://jsite.mhlw.go.jp/yamanashi-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/anzen_eisei/attention/necchushou.html)でも、県内の事業者向け情報が発信されています。

【参考】山梨県内の主な救急対応病院(例)

以下は、甲府市を中心に、救急科を持ち、重症な場合などの緊急搬送先として考えられる主な病院の例です。必ず事前に#7119や各病院に電話で現在の受け入れ状況を確認してください。

病院名 電話番号 住所 備考
山梨県立中央病院 055-253-7111 山梨県甲府市富士見一丁目1-1 救急科あり、三次救急対応
市立甲府病院 055-244-1111 山梨県甲府市増坪町366 救急科あり、二次救急対応
(社)甲府市医師会救急医療センター 055-228-8230 山梨県甲府市幸町14-6 夜間・休日の初期救急が中心

6. 関連情報・参考文献

より詳しい情報や、具体的な対策については、以下の公的な情報源もご参照ください。

7. まとめ:従業員の安全と企業の持続的発展のために

職場における熱中症は、適切な予防措置を講じることで確実に減らすことができます。今回の労働安全衛生規則の改正は、事業者の皆様にとって、より一層の安全配慮義務を明確にするものです。
従業員一人ひとりの健康と安全を守ることは、企業の社会的責任であると同時に、生産性の維持・向上、そして企業の持続的な発展に不可欠な要素です。

山梨県内の事業者の皆様におかれましては、本改正の趣旨をご理解いただき、令和7年6月1日の施行に向けて、計画的かつ着実な準備を進めていただきますよう厳に要請いたします。

【ご注意】この記事は、改正労働安全衛生規則に関する一般的な情報提供及び山梨県における留意点を解説するものであり、個別の事案に対する法的な助言や解釈を提供するものではありません。具体的な対応については、必ず厚生労働省や山梨労働局などの行政機関が発信する正式な情報をご確認いただくか、社会保険労務士などの専門家にご相談ください。この記事の情報は2025年5月現在のものです。

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この記事を書いた人

夜中の子どもの咳に慌てた経験から、山梨の救急医療情報を発信。娘を育てる父として、迷った夜に届く“地域の医療地図”を目指しています。

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